【消費したカロリー分だけ、刃の動きが止まります】
どんどん、刃は確実に2人に近づいている。
2人の体を引き裂こうと__。
「由加里‼︎なにしてるの⁉︎」
未だ一度ものこぎりを引かない由加里は、刃が自分に向かってきているのに、気にする素振りもない。
その距離はもう、1メートルもないのに。
「くそっ‼︎」
毒づいた北山は、懸命にのこぎりを動かして向かってくる刃を止めてはいるが、腕が痺れてきているのか苛ついているのが分かる。
声を荒げて、のこぎりを引いた時だった。
「ああっ‼︎」と短い叫び声を上げて、北山が身を仰け反らす。
どうやら、指を切ったようだ。
その間に、刃がぐんと迫ってきている。
「畜生‼︎」
足で丸太を蹴った北山は、なにを思ったか、丸太に食い込んでいるのこぎりを引っこ抜く。
そしてそれを、自分に__?
「なにをしてるの?」
「腰の拘束を切る気だ」
「どうして?逃げるため?」
「いや、そんなことしたら失格になるはずじゃ?」
小塚さんと2人で首を傾げていると、北山が拘束を斬り落とした。
自由になり、対戦相手である由加里を睨(ね)めつける。
のこぎりを手にしたままで。