部屋の隅で体を丸め、蹲った。
いつかの亜季が、そうしていたかのように。
呼吸を落ち着かせ「大丈夫」だと繰り返す。
何度も、何度も。
そうしないと、私は__。
壁を引っ掻いた。
爪が食い込む痛みが、私を引き止める。
【こちら側】に、私を留まらせるには痛みしかない。
爪が割れ、裂け、剥がれるほどの痛みが、私を私だと感じさせてくれる唯一の手段。
もしこの痛みが消えた時、それは__私が消える時だ。
だから私は、壁に打ちつけた。
自分の頭を。
ごん、ごん。
がん、がん。
亜季が、私を見ている。
自分と同じことをしている私を、笑っている。
笑い声さえ聞こえる気がして、頭から追い払うようにさらに頭を打ちつけた。
もうこのまま、死んでしまっても構わない。
ううん、もう__死にたい。
こんな絶望から、解放されたい。
でも許してくれない。
私の中の何かが、それだけは許してくれない。
得体の知れない【もの】を、飼っているようだった。
早くしないと、そいつに食い殺されてしまう。
だからその前に、私が__。
ごっ‼︎
強く打ちつけすぎて、意識が遠のいていく。
それでいい。
ほんの僅かの時間でも、この苦しみから逃れることができるなら__。