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血が吹き出している。


噴水みたいに、勢いよく亜季の首から飛び散っていた。


両手で首元を押さえ込むも、血は止まることなく、亜季は膝をがたがた震わせて崩れ落ちた。


暖かい。


返り血を浴びたところが、熱を帯びている。


しばらく痙攣していたが、すぐに亜季は動かなくなった。


死んだんだ。


私が__殺した?


でも、でも、そうしなければ、私が殺されていた。


正気を失った亜季に、噛み殺されていたに違いない。


私の血だけでは物足りず、とうとう私を食べようとした。


喰らおうとした。


正真正銘、亜季は人ではなくなった。


獣となったんだ。


「だ、誰か‼︎誰か助けて‼︎」


分厚いドアを叩いて、助けを求めた。


もう亜季は助からない。それは分かっている。


このまま、ナイフが首に突き刺さった死体と過ごすなんてこと、私にはできない。


「ここから出して‼︎」


叶わない願いを叫ぶが、誰の耳にも届かない。


届いていたとしても、このドアが開くことはない。


力なく地べたに座り込む。


亜季が、私を見ている気がする。


体が熱い。


体の芯が熱い。


なにかが爆発しそうで、なにかが崩れ去りそうで。