【北山竜一】vs【村上由加里】


「由加里‼︎一体どうして__?」


こちらに向かってくる由加里に向かって、私は声を掛けた。


本当なら再会を喜びたい。


抱き合って喜びを分かち合いたいが__。


前を通り過ぎる由加里と目が合った。


その目は、何も見ていない。


そのまま対戦部屋に入っていく。


「由加里ちゃん、どうしちゃったんだろう?」


「わからない」


そう答えるしかなかった。


それほど由加里は、様変わりしていたんだ。


ここを去ってから、さらに痩せていた。それも一回りどころじゃない。


それなのに、引き締まって見える。


精悍な顔つきで、近寄り難いオーラを放っていた。


それに__匂いだ。


むわっとむせ返るような、強くて鋭い匂いの鎧をまとっていて、それ以上、声を掛けるのを躊躇ってしまった。


ここを出たはずなのに。


私に【ここは危険だから今すぐ逃げろ】と連絡してきたのに、その危険な場所に舞い戻ってくるのか?


一体、由加里に何があったのだろう?


あの変貌ぶりからして、壮絶な【何か】を経験したはずだ。


それは何なのか?


答えが分からないまま、対戦が始まろうとしていた__。