__誰⁉︎
気配を感じて、目を開けた。
昼も夜も分からない。たとえ眠っても、暴れ狂う亜季にすぐ起こされてしまい、頭が鉛のように重たい。
辺りを見回すが、誰も居ない?
それじゃ__これはなんだ?
私は、手元に置かれていた【ナイフ】に触れた。
誰かが置いたんだ。
誰かが、ここにやってきた。
ナイフを握ると、どこか温もりがあるように感じる。
私や亜季じゃない、誰かの体温。
それだけで私は、嬉しくなった。
だってずっと、何時間も何日も、亜季と2人っきりで過ごしたんだ。
この、地獄のような部屋で。
この世の果てのように、誰からも忘れられた場所。
それなのに、誰かが来たんだ。
どういう目的でナイフを置いていったかは分からないが、私たちは忘れられてなんかいなかった。
それならまだ、望みはある。
あとどれくらい耐えられるか分からないし、亜季はもう正気になることもなく、吠え続けていたが、望みはある。
それは亜季に教えてあげないと‼︎
「亜季さん⁉︎」
隅っこの暗がりに呼びかけたが__居ない?
私は後ろを振り返った。
ちょうど亜季が、私の首に噛みつこうとしたところだった。