【このデブ‼︎】
「それでは前田亜季さんのほうから、対戦相手である太田真帆さんの体重を、ずばり言い当てて下さい」
「えっ」
亜紀は自分が先だと思っていなかったのか、ちょっと驚いた後、私のほうを見た。
頭のてっぺんからつま先まで、舐め回すように。
そんなことをしなくても【84kg】だと正直に答えたのだが__。
「えーっと、83kg」
1kgの誤差だ。
今の体重を偽りなく教えたつもりだが、最初にそもそも2kg少なく言っている。
だから今もウソをついていると判断し、その間の83kgだと言ったのだろう。
なかなか良い線をついている。
「それでは太田真帆さん、前田亜季さんの体重は?」
「それは__」
なかなか勝つのは難しいだろう。
誤差はたったの1kgだ。
でも私は亜紀を信じる。あの屈託のない笑顔と飾り気のない性格は、きっと本物だ。
「亜紀の体重は__90kg」と答えたら、私が勝つに違いない。
私は負けるんだ。
私のことを助けてくれたし、なにより病気の亜紀に勝ってほしい。
それはごく簡単なこと。
1kg以上の体重を言えばいい。
もっと確実なら、あり得ない体重を言えばいいんだ。