その歯で私の腕の肉を食いちぎり、むしゃむしゃとガムでも噛むように__。
亜季は啜っていた。
ちくりと痛むが、赤子が母親の乳を吸うように、私の腕に噛みついて吸っている。
私の【血】を。
涙を流しながら__。
「やめて‼︎」
思わず突き飛ばしてしまった。
激しく尻もちをついた亜季は、声を上げて泣きながら隅っこに逃げていく。
小さく体を丸め、肩を震わせてすすり泣く。
とても悲しい、心を震わせるような声で__。
「ごめんなさい、私、びっくりしてつい」
近くに寄りながら、声を掛ける。
おそらく、亜季は何も食べていない。
私がここに来るずっと前から、鎖に繋がれて水すら飲んでいないんだ。
つーっと流れた血を見て、喉がゴクリと音を立てるのも仕方ない。
私もいずれ、そうなるんだろう。
このままここに閉じ込められたのなら。
「いいのよ、少しくらいなら」
そう言って、腕を差し出した。
亜季が吸い出すくらい、献血したと思えばいい。
それで亜季の苦しみが和らぐのなら。
初めは首を振って拒絶していた亜季も、再び垂れ出した血には勝てなかったのだろう。
恐る恐るといった風に私の腕を取ると、血を舐め取った。
宝物のように__。