前田亜季?


どこかで聞いたような__⁇


あ、そうだ。


真帆が話してくれた。


最初の対戦相手が確か、亜季という名だった。


それなら私と同じ、脱落者だ。しかも亜季は、かなり早い段階からここにいることになる。


「いつからここに?」


「私、私っ__」


激しく体を震わせる亜季とは、会話にならない。


一体、なにがあったのだろう?


丸い体を抱き締め、推測するも分からない。ここは落ち着くのを待ったほうがいいだろう。


亜季は、鎖で繋がれていた。


両足首に足枷がつけられており、その周囲は色が変わっていて痛々しい。


外そうと力任せにもがいたのか。


「ひどい」


背中を撫でながら、でも私は確信していた。


匂いは、いや、臭いは亜季から発せられている。


体臭レベルじゃない、獣臭。


これは、亜季そのもの。


とても同年代の女性から出る香りじゃない。


どうやったらこんなむせ返るような匂いがするのか?


震えが小さくなったところで、私は再度、声を掛けた。


「真帆、知ってる?」


「__真帆?」


「そう。バスで隣同士じゃなかった?」


「真帆?真帆?」


そう繰り返し、必死で思い出しているようだが、分からないらしい。


記憶が__ない?