「俺の3倍だって言ってただろ?やっぱり図星か」


「じゃ、じゃあ、お前は56kgじゃないか‼︎」


胸を張って威張る巨漢を、男は鼻で笑った。


「俺が本当の体重を言ったのなら、な」


探り合いだ。


すでに腹の探り合いが始まっている。


今度は静寂から一転、車内は騒がしくなった。


でもどこ声にも、棘が含まれていて痛々しい。


その間にも、どんどんと合格者と脱落者が振り分けられていく。


「亜紀、私ね__」


自分の胸の内を話そうと思って声を掛けたが、番号を呼ばれてしまった。


仕方なく席を立ち、狭い通路を進む。


後ろを振り返ると、亜紀も深刻そうな顔をしてやってくる。


バスのタラップを降りると、そのままテントの中に。


そこには、大きな体重計が向かい合わせに置かれていた。


合宿のスタッフであろう男女が数名、周りを取り囲んでいる。


「太田真帆さん、靴を脱いで乗って下さい」


「__はい」


言われた通りに体重に乗ると、向かいで亜紀も体重計に足を掛けたところだった。


デジタルが【84kg】と映し出す。


顔を上げると、にっこりと微笑んだ亜紀と目が合う。


「亜紀、あのね__」