「落ちる⁉︎」
篤志の腰に飛びつくと、大きく左右に揺れた。
道連れにする気なんだ‼︎
もう勝てないと分かって、針山に心中させる気だ。
「な、なんて卑怯なの‼︎」
悔しくてガラスを叩いたが、パッと本郷守が手を離した。
そのまま針山に落ちていく。
その顔は、まるで苦い虫を食べたように歪んでいる。
それもそのはず。
篤志は今も、ダイエット中だ。
飲尿したことによって吐き出される宿便を、垂れ流しているのだから。
そこに思いっきり顔面から飛びついたんだ。
鼻が曲がったことだろう。
【沢渡篤志さんの勝利とします】
床の針山が閉じていく。
ゆっくりバーが下りて、篤志がやってきても誰も近づかなかった。
「おめでとうのハグもないのか?」
「ちょっと‼︎こっち来ないでよ!」
「なんだ。お前なら俺の苦しみが分かるだろう?」
「わ、分かるけど、洗ってからにして‼︎」
「水臭いヤツだな」
「うんこ臭いヤツに言われたくないわよ‼︎」
私は、ゾンビのように追いかけてくる篤志から逃げ出した。
少しだけ可笑しくて、笑ったりもした。
こんな時だというのに。
こんな時だからこそ。
この先、2度と笑えなくなるのを知っているかのように__。