「えっ?」
「はじめに82kgって言ってたけど、本当なのかなって思って」
そう言うと、亜紀は視線を泳がせた。
疑っているのを申し訳なく思っているのだろうか?
「私は__」
正直に言おうかどうか迷っていると、バスの扉が開いた。
1番、前の座席に座っている2人が、誘導されるがままのそのそと降りていく。
私たちの席は真ん中だ。
ほどなく順番が回ってくるだろう。
少し腰を浮かすと、そこにはテントが張ってあり中が見えない。
「お前、なんで参加したんだよ⁉︎」
近くで怒鳴り声がした。
例の痩せている男と、対照的にかなり太っている男が言い争いを始める。
「痩せてるじゃないか‼︎俺はこのままじゃ、あと3年が限界だって医者に言われてんだよ‼︎」
「だから譲れって?」
「そうだよ、助けると思ってさ‼︎」
巨体を揺らしながら、男が拝み倒す。
確かにダイエットの必要性に駆られているのは、痩せている男性のほうじゃない。
命に関わるなら、譲ってあげても__?
「それなら1億くれんのか?」
「それは__」
「お前、168kgだろ?」
「なっ⁉︎ど、どうして?」