「どうしたんだろう?凄い汗だし」
篠田さんでさえ、篤志の異変に気づいた。
ずっと懸垂をし続けている、本郷守よりも汗だくだ。
てっきり、余裕の構えだと思っていたのに。
「どこか具合の悪いのかもしれない」
「そんな、こんな時に?」
「懸垂もできないくらい、どこか悪いんだ」
小塚さんの言葉は、今は確信に近い。
汗だけじゃないからだ。
懸垂もせずただぶら下がっている篤志は、時折、顔をしかめている。
いつものしかめっ面じゃなく、痛みに耐えている感じだ。
「ねぇ、なんか動いてない?」
「えっ?」
「ほら、上にあがってる」
丸い指で、篤志の鉄棒を指差す篠田さん。
そういえば、少しずつ上がっているような__?
【1カロリー消費で、鉄棒が止まります。消費しない場合は、串刺しになって頂きます】
アナウンスとともに、床が真ん中から割れていく。
そこに現れたのは【針山】だった。
無数の図太い針が、天に向かって突き出ている。
もし落ちれば間違いなく「___串刺し」だ。
「でも、それじゃなんで上に上がっていくの?」
私の疑問も、すぐに解明された。
天井から突き出ている、無数の図太い針によって。