「真帆ちゃん、昨日はどうしたの?」
「えっ__」
「いや、戻ってこなかったから心配で」
「ちょっと、気分が悪くなって」
早口で答える。
気遣う言葉を掛けてくれる小塚さんの目を、まともに見ることができなかった。
あれからすぐ部屋に戻り、眠れぬ夜を過ごした。
運命は今日、3回目の体重測定で決まる。
あと4kg。
残された時間まで走り込むが__口いっぱいに生肉を喰らう、生々しい画が浮かんで消えない。
私がどれだけ走っても、無意味じゃないのか?
何度となく心が挫けそうになるも、一抹の望みにかけて最後まで走り切った。
残されたチームはB、C、D、Eの4チーム。
全チームが最後の3回目を残すのみ。
しかも早い者勝ちだ。
10kg痩せていれば、それでいい。
だが__。
どのチームも、透明な壁に取り囲まれた巨大体重計を前に、身動きが取れずにいた。
あそこで毒殺されたんだ。
尻込みするのも無理はないが、早くしなければ先を越されてしまう。けれど10kg減量していなければ、待つのは死のみ。
いくつもの相反する感情に、押し潰されそうになる。
「早く計ろうぜ」
複雑な感情とは無縁の篤志が気だるそうに促すが、すぐに頷くことができない。
その隙に、Dチームが名乗り出た。
張り詰めた緊張感の中、体重計に乗る。