「うそっ」


思わず漏らした。


これを食べないと、不合格__?


膝の上に置いたお弁当を、呆然と見下ろす。


脂のサシが入ったお肉は、本来なら良い肉なのだろう。口に入れるとふんわり溶けるに違いない。


けれどさっきは、口に含んだ瞬間、胃が引きつけを起こすかと思ったほどだ。


箸で掴んで目の前まで持ち上げる。


ふと見ると、斜め前の男の人はガッついていた。


唾が口の中に広がる。


悪い方の唾だ。


やっぱり、食べられない。


私は箸を戻した。


これを完食すれば、胃が痙攣を起こすからだ。


仕方がない。


フッと力なく笑った時、膝の上の弁当がなくなった。


「内緒ね」


亜紀が、自分が食べ終わった空の弁当を私の膝に置いた。


そして肉を一気にかきこむ。


「___ありがとう」


「いいって。気にしない気にしない」


早くも完食しそうな勢いだ。


良かった。


本当に隣が亜紀で良かった。


誰かが勝ち残って、それ以外は負けるんだ。


だから自分以外は敵とみなしてもいいのに、亜紀は助けてくれた。


もし、もしこれから先、亜紀が困ったことがあるなら助けよう。


私はそう心に誓った。