思わず顔を上げる。
その時、スタッフの1人と目が合った。
スーッと目を細めた女性スタッフが、こちらにやってくる。
決して、私から目をそらすことなく__。
「どうかしましたか?」
機械的に問いかけられ、とっさに携帯を隠した。
なぜだか分からないけれど、そうしないといけない感じがしたからだ。
「お弁当も食べてないようだけれど?」
「あの、食欲がなくて」
「どうして?やっと解放されたのに」
口調が徐々に、詰問調になっていく。
明らかに私は、疑われていた。
でも一体、なにを疑うというの?
私が、気づいたから?
携帯で流れるニュースが、私たちと関係があること?
それに私と親しい人たちは、恐らく私が事故に巻き込まれたと思っていること?
「せっかく痩せたのに、このままダイエットして体重を減らしたいんで」
なんとか思いついた理由を口にすると、しばらくスタッフは私の顔をじっと見つめていたが、やがて微笑んだ。
「よい心がけね」とだけ言うと、戻っていく。
その背中を見送りながら、私は1人、誰にともなく問いかけていた。
これから何処に行くのだろう?
無事、家に帰れるのか?
いや__。