「…嫌がってるじゃん。」

知らない声に顔をあげると、男の人が立っていた。
…長身で、優しい顔で、どこか大人っぽい。
世に言うイケメン、ってやつ。
真っ直ぐこちらに向けられた目から、視線をそらせない。
わたしは、その目を知っている気がする。


「…は、お前誰だよ!関係無いだろ!」
「別に誰でもいいだろ。嫌がってるなら離してやれよ。」


夕日が照らす、歩道橋の上。
帰宅ラッシュなのか、わたしたちの周りを歩く人が増えてきた。
大智が少し大きな声を出して、通り過ぎる人たちがこちらに目を向ける。
それに怯んで、わたしの手を離した大智は舌打ちをして逃げ出した。
掴まれた腕がヒリヒリと痛む。

この人は、何でわたしを助けてくれたんだろう。

彼は大智が立ち去ったのを見て、その場を離れようと向きを変えた。





「あの…!」


…思わず呼び止めてしまった。
わたしの声に振り返る男の人。
やっぱり優しい顔。

さっきから、懐かしい感じがするのはなぜだろう。