『凛音にさあ、いいところ見せたくない?』



帰り道の翔太くんの声が頭に響く。


「…何で、こんな気持ち。」


お兄ちゃんと一緒に居ると、安心する。
でも時々、ひどく切ない気持ちになる。
…前に大智を好きになった時と、もしかしたら同じなのかもしれない。
お兄ちゃんが笑うと、わたしも嬉しい。
お兄ちゃんが元気ないと、心配になる。


「…だめだ。」


ベッドに身を投げ出し、目を閉じた。
そう、だめだ。
誰かを好きになったところで、いいことなんて無い。
きっとまた傷ついて、独りになって、虚しくなる。
もう、中学の時の孤独な気持ちは感じたくない。

…こんな気持ち、早く忘れた方がいい。

わたしは恋なんてしてはいけないんだ。