翔太くんの言葉を考えてみる。
お兄ちゃんとして見ていない…。
でもそれは、何て言うか、懐かしい気持ちというか。
何でか、昔から知っている人のような安心感がある。
…それって、好きとは違うんじゃ。


「…可哀想な凛音、」
「え、何、なんか言った?」
「いや…じゃあさ、確かめてみない?自分の気持ち。」


気付いたら家に着いていて、翔太くんが送ってくれたんだと気付く。


「確かめるって…?」
「…なあ、ちょっと耳貸せよ。」
「えっ、…と、」


翔太くんは、わたしの耳に手を当てて、ひそひそと呟いた。


「…え、それだけ?」
「うん、それだけ。…やってみ。本当に自分の気持ちを知りたかったらな。」


お兄ちゃんに負けず、優しい笑顔になる翔太くん。
彼のこんな優しい顔は初めて見た気がする。
普段はチャラチャラしてるのに。
もしかして、恋愛のエキスパートか何かだったり…?
翔太くんは未だに混乱しているわたしの頭に手を置くと、
じゃ、またなーと帰って行った。
わたしは彼に小さく手を振り、家に入る。
まだ誰もいない家にわたしの足音だけが響いた。
自分の部屋に入り、何気なく机の上のやりかけのイラストたちを眺める。