「…わたしお兄ちゃんに小さい時から絵描くの好きだったって
言ったことあったっけ…?」


…てゆうか、絵の話自体したことない気がする。
わたしの呟きを聞いて、お兄ちゃんの顔色が変わる。


「いや、ほら、あれだよ!奏美さんから聞いたんだよ!」
「お母さんから?」
「そうそう、凛兎は昔から絵描くのが好きだったって、」
「…そっか。」


なんだ、お母さんの仕業か。あとで尋問しよう。
…でも何でお兄ちゃんはそんなに慌てているんだろう。


「凛音、俺夜からバイトだから帰るわー。」
「おう、玄関まで送るよ。」


わたしの部屋の漫画を勝手に読んでいた翔太くんが帰り支度を始める。


「じゃあ、さよなら。」
「…あれ?凛兎ちゃんは来てくれないの?」
「……。」


子犬のような顔で見つめられる。
わかったから、行くから、そんな悲しい顔で見つめないで。

…わたし、翔太くん、ちょっと苦手かもしれない…。