その時の遥の表情はいつもと同じくクールであった。そして、強がりを言っている様でも無かった。

ジュリには相手の動揺や恐怖といった心を読むことが出来る。それは相手の表情やしぐさから読むのでは無く、脈の速さと汗と動きのキレから読み取る。

どんなに無表情でいても緊張すれば脈は速くなり、変に汗をかいたりする。そして、緊張をすれば人によれば喉が乾くものもいる。そして、若干ながら動きにキレがなくなる者も出てくる。

しかし、遥は全く動きが悪くならない。それどころか動きにキレが増している。

「流石ね。遥ちゃん、あなたは動揺や恐れとは無縁の人間ね。それはまさに勝負と言う修羅を生き抜く大きな武器だわ。でも、この数の敵には勝てないわ。」

そう、遥の目の前に立ちはだかるのは遥がこれまで殺してきた人間である。その数1000人近くである。

しかし、遥は何とも冷たく言葉を発する。

「私を舐めているのか?魂もこもっていない死人が1000人いたところで私は負けない。ジュリ、お前の負けだ。」

そう、遥は立ちはだかる敵に魂の熱を全く感じなかった。まるで、ロボットの様に無感情で立ち向かってくる様で全く歯応えがない。