「呪いや霊は効かない・・・か。じゃあこれはどうかしら？」

ジュリは手をパンっと叩くと、遥の前に多数の人が現れてきた。

「遥ちゃんに纏っていた呪いを実体化したわ。この闘技場のお客さんの目にも見えるわ。遥ちゃん、あなたはこの人達を殺したのよね。みんな、あなたに殺された恨みや憎しみをもっているわ。その恨みや憎しみの力・・・呪いの力を味わいなさい。」

ジュリは再び手をパンっと叩くと実体化した呪いは遥の方へ走っていく。それはまるで死者の行軍の様でなんとも不気味な光景であった。

この時、ジュリは一つ遥を試していたことがあった。それは一度殺した人を前に物怖じせずに動けるかどうかである。

ジュリは呪いを使って殺された人の実体化を何度もしているが、殆どの人は殺した人を前に動揺するのだ。それは、死に顔をよく覚えていて不気味に感じたり、罪悪感から動揺したり、憎い人を殺してスカッとした人にとっては恐怖そのものである。

その恐怖や動揺を遥は感じるのか、それをジュリは知りたいのである。本当に強い人は心も強く、死んだ者が目の前に現れても冷静なものだからだ。

そして遥はジュリの思っていた通り、クールな表情で呪いを斬っていた。それはもうバッサリとドンドンと斬り伏せて行っていた。

「ジュリよ、１度殺した者を実体化しても私は動揺しない。なぜなら、１度殺した者には負ける気もしないし、この者達を殺したことに全く後悔していないからだ。この私の精神状態を弄ろうと思っていた様だが、その手には乗らんぞ？」