ニヤリ、と笑う親父がいた。


「いんじゃねーの。


好きな気持ち絶対に曲げんなよ。

出なきゃ、愛心ちゃんは俺が貰うからな」


たまに、まじで言ってんのかなって思うときがある。


だってそん時の親父の顔は、真剣で決して揺るがない瞳をしていた。


「バカいえ、親父にも渡さねーよ」


だから、気づかない不利をする。


「あはは、じゃあな。

ちゃんと、教室戻れよ」


高らかに笑った青さんは、去ってゆく。


その後ろ姿が、なんだか切なそうだと私の勘違いだと、決めつけて私は、見送った。