あれは、数ヵ月ぶりに会えて、久しぶりのデートをして、茉尋を家まで送るときだった。

「キキィィィィィ!」

そんなブレーキ音が交差点を渡ってるときに聞こえた。

こっちに暴走して来る車。

叫んでいる人。

茉尋を守らないと!!

そう思ったとき、体がすぐに動いた。

「茉尋ッ!」

抱き締めたとき、茉尋の匂いがした。

「凌ッ!?」

そんな声が聞こえた時にはもう、跳ね飛ばされていた。

「バァンッ!」

体を勢いよく地面に打ち付けた瞬間、走馬灯が見えた。

茉尋の笑顔、はにかんだ顔、怒った顔、拗ねた顔、泣きそうな顔……。

沢山の茉尋の、大切な彼女の顔や可愛い仕草が記憶が目の前に流れていく。

「大丈夫かッ!?

ち、血がッ!」

そう、慌てている男性。

「キャァァァッ!!」

そう、泣き叫んでる女性。

茉尋…。

「ま、ひろッ」

掠れた声が出た。

茉尋は大丈夫だろうか。

腕のなかにいる茉尋は、目を閉じたまま。

でも、かすかに息はあった。

良かった……。

「大丈夫ですかッ!!

ひどい出血だッ!

急いで止血を!!」

そんな、救急隊員の声が聞こえた。

「まひ、ろ、を…。

彼女、を先、に助け、て下さ、い。」

途切れ途切れでそう言った。

「分かりました!

彼女を頼む!!」

そんな声が聞こえたとき、俺は意識が薄れていった…。