次に目を覚ました時には、いつもと違う天井と壁に囲まれていた。


「さくら。大丈夫?」



「颯太。ずっといてくれたの?」



窓の外を見て気づいた。




あっという間に、あたりは真っ暗になっていてあれからかなり時間が経っていたんだ。



「さくらが、このまま目を覚まさなかったらどうしようとか考えてた…。本当に戻ってきてくれてよかった。」




「そんな…。大げさな…。」




苦しくなるくらいに、そんな颯太の優しさが嬉しかった。




「心配かけてごめんね。」




「いいよ。無事で本当に良かった。」




「それでね、颯太。私決めたの。」





「何を?」




「私、会ってみようと思う。」




「さくら…。決めたんだね。俺、さくらのこと応援する。」




「ありがとう。」





私には、居場所がある。



暖かくて、心が安心できるような場所。



ずっと、産まれ育ってきた場所。



帰るところがあれば、私は傷ついても大丈夫な気がしていた。




「さくらちゃん。大丈夫?」




ドアをノックして、入ってきたのは私の主治医である椎名先生だった。



「大丈夫です。」




「久々に搬送されてきたからびっくりしちゃったよ。


もう、大丈夫そうだけど検査データー見る限りちょっと入院になるかな。」



「えっ?」




「今回、HbA1Cが高かった。あと尿糖も高い。さくらちゃん。今までに何か気になる症状みたいなのってなかった?」



気になる症状…。



そんなの気づかなかった。




「毎日血糖値も測ったりとかしてましたけど、そんなに高くなることもなかったです。」




「そっか…。少し、治療のために入院して経過見ていこうか。」




「はい。」




「さくら、俺施設長に電話入れてくる。


それから、さくらの荷物も持ってくるね。」




「颯太。いつもありがとう。」






「何みずくさいこと言ってるんだよ。


そんなの、気にしなくていいから。」






「ありがとう。」





「颯太君は気が利くね。」





「颯太は昔から、面倒見がよくて。その優しさについ甘えてしまうことも多くて…。」




「そうか。ちょっと安心した。さくらちゃんは小さいころからずっと誰にも頼ったり甘えたりしてこなかったから。そんなさくらちゃん見てて少し心配してたんだ。」




「そんな。私は多くの人に助けられてばっかりでした。」





「その分、さくらちゃんの周りには支えてくれる人がたくさんいるってことだね。」





「はい。」




小さい頃は、毎日のように大人に不信感を抱いては傷つく言葉を施設長や椎名先生にぶつけてきたな…。




人の優しさに触れることが怖かった時期もあって、自分が傷つかないように自分の殻に閉じこもっていた時期を思いだした。




そう考えると私も少しは成長したのかもしれない。