「ほほう、三角関係とは面白い!」

社長の瞳がキラキラ輝く。

「このところマンネリ化していたから起爆剤が欲しかったのだよ」

何がマンネリ? 何のための起爆剤?
社長って、副社長以上に訳の分からない人だ。

「僕たちで遊ばないで下さい」

副社長がムスッとしながら「行くぞ」と剣持さんに声をかける。
「私も一緒に行こう」と社長が私と肩を並べる。

『付いてくるな』と副社長が鋭い眼光で牽制するが、社長には全く効果がないようだ。

「それで? どっちがタイプなんだね?」

前を歩く副社長と剣持さんを見ながら社長が興味津々に訊ねる。
完全に面白がっている。

「社長、お二人に失礼です。私など役不足もいいところです」

あくまでも謙って慎重に言葉を発する。

「ほう、なかなか殊勝な心掛けだね。イマドキの子にしては珍しい。拓也の嫁にもってこいだ」

「だろう」と先を行く副社長が相槌を打つ。

この人たち、絶対に私で遊んでいる。

「これで拓也のゲイ疑惑は払拭出来るな」

社長がニコニコ顔で「よかった、よかった」と頷く。
あれ? もしかしたらフェイク?

「そんな言い方をしたら、奈々美が誤解するだろ。違うぞ、お前は本物だ」

何が本物? もうさっぱり分からない。