「はーい。」
ノックされたドアの音に乗じ、
私は0.5秒でだらりとした制服を
直す。
がらららっ。
旧生徒会室ならではの、古びた
機械音のような扉を開ける音とともに
赤毛のふわふわの髪の毛をなびかせる
おっとりめの少女が入ってきた。
「どうぞー。」
私はにっこりと笑顔をつくり
ソファの方へと促す。
ストンと座ったのを確認し、
私も真正面へと腰を下ろす。
「初めまして。コイ部の菜々子と
申します。」
私は自分の自己紹介を終え、
視線を目の前の少女に送る。
「あっ…。えーっと。私、
海原 蛍(うみはら ほたる)と
申します…。」
律儀な挨拶をしてくれた蛍と名乗った
少女に緊張をほぐすべく、優しい
笑顔を向けた。
と、こんなところで時間をとっている
場合ではない。
「では…さっそくお話の方を…。」
恋バナ大好き人間である私は
記念すべき第一号である蛍との
親交そっちのけで本題に切り込む。
その様子に蛍は多少おどおどしたもののゆっくりと口を開いた。
「実は…。入学式で一目惚れ
して…。」
出た!中学、高校の入学当初に
訪れる『一目惚れ』
新しい生活に不安もありつつ、
高揚感の方が勝ってしまう入学式に
起こってしまう必然といえば必然の
現象‼︎まさかいきなり一目惚れという
高難易度の恋バナがくるとは。ー
私のリアクションには目もくれず、
恥ずかしさが出てきたのか、蛍は
顔を真っ赤にし、下を向いている。
私は前屈みの姿勢になり手をクロス
させアゴに乗せる。
「詳しい話。聞かせてもらおうか。」私の恋バナセンサーは過剰に反応し
私は目をギラつかせた。