頭の中で咲桜の言葉が響く。


が、やっぱり自分の空耳だろうか。


……だって、咲桜が?
 

顔を真赤にして、泣きそうな顔で口を動かす。


『……すきです、流夜くんが。にせものじゃ、私もいやです。……本物に、なりたい』


『………』
 

これはまだ夢の続きか? 


赤らんだ顔の咲桜がいっぱいいっぱい、言葉しているのがわかる。


すき? 咲桜が? ……俺のことを?


『答え、です。流夜くんがすきだから、ちゃんと、彼女になりたい、です……』
 

咲桜は、目を逸らさなかった。
 

あれほど俺を前にして逃亡を繰り返していた咲桜が、真っ直ぐ正面からそう言った。


『………』
 

触れれば溶けてしまいそう。


氷に触れるように、震える手で、恐る恐るその頬に触れた。


熱っぽくなっているほっぺた。この子が生きている証拠。


そして、そのぬくもりが、先ほどの言葉が幻でないと教えてくれた。