『……私は言ってほしかったけど』
『けど、まさかキスしたこと忘れているようだったら話さない方がいいか? とも訊けないだろう。その質問自体がばらしてる』
『そうだけど……。また、する気だったの?』
『ん?』
『言ってたじゃん。そのうちしてやるから、って』
『ああ……そういう風にぼかしておけば、咲桜が自発的に思い出してくれるかなっていう浅い願望だ。あと、なにもなかったって思われるのも……少し嫌だったからな。俺の中では結構重要な出来事だったし』
『私の中でも重大事件だよっ。うー、ちゃんと憶えていたかったー』
『……憶えていたかったのか?』