咲桜を抱きしめて、短いながら深く眠り込んでいた。


軽く背中を叩かれ、ぼんやり瞼を開けた。


そこには優しい表情の咲桜がいて、やっぱりこれは夢で、願い過ぎるあまりに見た幻だと思った。


幻でも逃げられたくなくて、きつく抱き寄せると抗議の声があった。


『ちょ、流夜くん! 起きてるなら離して!』


『……起きてないから離したくない』


『会話成立させといてふざけんな!』
 

怒られた。
 

また眉間に一発喰らいそうな雰囲気になってきたので、いい加減寝惚けた頭を覚醒させるよう努めた。


少し腕を緩めたけど、まだ抱きしめたままだ。


『……逃げなかったんだな?』