転校生ご登場というのは、半期に一度の裏イベントでもある。そのため、今日のチャイムは特別緊張感が増して聞こえた。担任が来ただけで、妙に背筋が強ばる。30人ほどのクラスに新メンバーが1人加わるということがいかに大きな出来事か、早まる鼓動と強ばる背中が知っている。
起立、礼、着席の流れも無駄に力が入る。これが転校生パワーである。

「はい、もうみんな知ってるよな?」

「女子!」

「楠原、そこはどうでもいい」

軽く盛り上がり、場は温まった。いつでも来いとみんなが思っていることだろう。

「おーしじゃあ入って入ってー」

合図とともにガララと引き戸をスライドさせ入室したのは、いわゆる美少女の部類に入るであろう顔立ちの清楚な転校生だった。
制服は本校のものを仕立て済み。他校の制服姿を見てみたいのが正直な感想だったが、大した問題ではない。首元までのショートカットの黒髪、緊張してるのかピクリとも笑わない無表情の顔は真珠のように透き通り、そして米粒より小さく見えた。シンプルに美しいその姿に、目から全身へと電流が走るような感覚に陥る。
また一つ、学校に通う理由ができた、いや今なら死ねる。そんな気持ちだった。

「ほい自己紹介お願いしまーす」

「蓮見凛子です、短い付き合いになると思いますがよろしくお願いします」

「蓮見凛子を名乗るために生まれてきたような感じの可愛さじゃね?」

「うん、たしかに」

「だから言ったろ、来るまでは分かんねーって」

後ろの連にコソコソと話す柳。どこか敗北した気分を味わいながら、うんうんと小さく頷く連。

「おしじゃあ蓮見の席は……あそこかな」

転校生あるある、高確率で後ろの席。連の二つ左、校庭を眺められる窓側の後ろから2番目に蓮見は座った。最後列よりもその辺が丁度いいよなと、黄昏れる蓮見を見て思う連だった。

「じゃあ体育館行け、全校集会だ」