「恋はね、人に来て欲しいから、来い来いって言っていたから、恋というのかもしれないわ、きっと。」

私は笑いながら話した。

しかし、幸せなのは、束の間だった。

女房や家人には気づかれず、そっと、門を通り抜けようとした時。

「そち。」

目が覚めた家人に声をかけられてしまったのだ。

私はその時、単衣に袿を被っただけだったし、家人が私の顔を知っているわけがないので、平気だと思った。

「桜の君ではいらっしゃらないか。」

バレた。
背格好だけで、バレたらしい。