『おはよ。』


『おはようー!』



学校に着くと私の席に

未羽と秋くんが居た。


『そう言えば、傘ありがとね。』



そう言って未羽に傘を返す。



笑顔で受け取る未羽と

秋くんに、

玲音先輩とのことを話してみることにした。

名前は言わずに。




『それは、恋だと思うなぁ。』


『やっぱり、そうなのかな。』



肩が触れて緊張して


笑顔にドキッとして


その人だけが呼ぶあだ名にときめいた


その事を2人に話した。




『好きなら好きでいいと思うけど。

なんでそんなに迷うの?』



『えっ……と、あの』



相手が女性だからとか言えない……

いくら幼馴染にでさえ。



とりあえずそこでは誤魔化した。



チャイムが鳴って先生が来たから

2人は納得いってない顔で席に戻っていった。




私は昨日の雨でグシャグシャになった


校庭を眺めながら


いつかこの気持ちが消えるまでは


ひっそりと好きでいようと


そう思った。





『ちょっと、私お兄ちゃんに

お弁当届けてくるね。』



そう言った私に



はーい。



と癒しオーラ全開の返事をして


秋くんと未羽は


机をくっつけ合わせ


お弁当を広げ始めていた。




お兄ちゃん、教室に居るかな?



それとも午後の全校集会のために

生徒会室に居るかもしれない。


私はお兄ちゃんのお弁当をかかえて


生徒会室に向かうことにした。




お兄ちゃんが居たら


玲音先輩も居るよね……


どうしよう、急に緊張してきた。



生徒会室のドアをノックする。



すると、扉が開いて



『お、どうしたの?』



いきなり玲音先輩と会うなんて


思ってなかった……。



『あ、えっと、あの、お兄ちゃん居ます?』



急なことにテンパって


吃ってしまった。




『居るよー、中に入りな。』


『あ、はい。失礼します』



私が生徒会室に入ると


お兄ちゃんと玲音先輩の他に


2~3名


生徒が居た。



あ、同じクラスの宮城くんも居る。


話したことはないけど


お昼休みはこんなところに居たんだ。



そのくらいの関係なのに、


なぜだか私は今


宮城くんが少しだけ羨ましい。



『どうした?』

お兄ちゃんが私に気付く。



『あのね、お弁当渡すの忘れてて……』


お兄ちゃんは

ありがとう。と言ってお弁当を受け取った。



『おー、なんかいつもより豪華だ』


確かに


今日は気持ちがフワフワしていたせいか


お弁当の具材を沢山作ってしまった。



『おぉ、美味そうやな。

悠介、1個ちょうだい。』



玲音先輩はお弁当を、覗き込んで


卵焼きを手で掴んで食べた。



『あっ!お前、まだ良いって言ってないんだけど!
勝手に食うなよ。』


『美味いな〜。これ、ゆうが作ってるんやろ?
凄いなぁ。』



玲音先輩に褒められた……。


自然と笑顔になっていく私。


今、傍から見たら気持ち悪いくらい


デレデレした顔してるんだろうな。




それからお兄ちゃんに



『夕姫も一緒に昼飯食べていくか?』



と聞かれ教室で


秋くんと未羽が待っていることを思い出した。



『あ、いや教室で友達待ってるから

もう行くね。』


そう言って生徒会室の扉に向かう私に


『またね!ゆう。』



そう玲音先輩は声を掛けてくれた。


『はい、また!』




一応、普通に返事はしたつもりだけど


内心はめちゃくちゃ緊張したというか


嬉しかった。





それから私は


学校がある日は毎日


玲音先輩に会いたくて


お兄ちゃんのお弁当を


生徒会室や教室に届けるようになった。