未羽から借りた折傘は

2人で入るには少し小さかった。


雨に当たって


濡れてしまう左腕でさえ


気にならないくらい


玲音先輩の左腕と触れ合う


右腕に意識が集中していた。



なんで、こんな心臓バクバクしてるんだろう。




きっと玲音先輩が綺麗すぎるからだ

と自己完結する事にした。



『ごめんな、狭いやろ。』


さっきは気付かなかったけど

玲音先輩の声、いつもと違う気がする。



『いや、私は大丈夫です。

それより風邪ひいてますよね?

声がいつもと違うから。』



『あー、風邪ちゃうけど朝から喉痛くて。

せやけど明日の全校集会で

司会やらなあかんねん。』



ホンマどないしよ。


という玲音先輩に


何かしてあげたくて


咄嗟にポケットに手を突っ込むと



カサッ



と音がした。



あ、秋くんから貰った飴……



『玲音先輩、これ要りますか?』



そう言ってはちみつキンカン味ののど飴を差し出す。



『おー!おおきに。

今日は色々して貰ってばっかりでごめんなあ。』


そう言って玲音先輩は


優しく笑う。



ドキッ



え、ちょっと何で私、ドキッとしてるの。



いくら美人だからといって


相手、女の先輩なのに。


さっきから腕が触れ合って


妙に変な感じになるのも


気のせい……なはず。



だけど、何で


何で玲音先輩と居ると


こんなにも胸がざわつくのだろう。