自分一人だけだと思っていた昇降口に
もう1人誰かが居るのが見えた。
あ……副会長だ。
そこに居たのは生徒会副会長の
永澤玲音先輩だった。
去年、大阪から引っ越してきて
綺麗でカッコよくて
学校のマドンナの様な人。
そんな副会長とは、
何度か話をした事がある。
何故かというと
私の義理の兄の木南悠介が生徒会長だから。
何してるんだろ。
傘、無いのかな。
普段の私なら気にしないで帰るはずなのに
今日はなぜだか声を掛けていた。
『あの、傘無いんですか?』
『ん?あ、悠介の妹さん。
傘な、悠介に貸して無いねん。』
午前中はあんなに晴れとったのに
と拗ねたように言う玲音先輩は
いつものしっかりしている雰囲気とは違い
なんか可愛らしくて
そのギャップに
思わず笑ってしまった。
『なんで、笑うねん。』
『いや、すみません。何でもないです。』
そう言いながらも笑う私に
玲音先輩は不思議そうな顔をしていた。
『あ、そうだ傘入りますか?
相傘になっちゃいますけど。』
そう言って私は
未羽から借りた傘を見せる。
『ええの?おおきに!』
そう言って笑った玲音先輩の笑顔が
やけに眩しく見えた。