『ねぇ、ちょっと忘れ物したから
先帰ってて。』
2人にそう断って私は教室に戻った。
教室に向かう廊下は
いつもより静かで
雨が地面を強く打ち付ける音が
室内にも伝わってくる。
あ、あった。
案の定、スマホは机の中に
入っていた。
いつもならちゃんと
ポケットにしまうのに
今日は雨のせいで
忘れていたのかもしれない。
教室にはまだ人が
チラホラ残っている。
皆、無駄な会話をしていないせいで
ノートに当たるシャーペンの音と
窓にあたる雨の音だけが
教室に響いていた。
雨が止むのを待っているのか
ただ単にテスト勉強のためなのか。
高校二年生にもなると
成績が落ちるというけど
進学校であるこの高校は
真面目に勉強する人が多い。
私も、分からないところは
天然だけど頭の良い未羽や
普段はホワホワしてるけど勉強は出来る秋くんに
聞いていたから
今までは赤点を取らずにこれた。
だけど、今回はどうだろうか。
そんな事を考えながら
昇降口について
靴を履き替える。
他の生徒は誰もおらず
話し声が無いせいなのか
雨の音がさっきよりも
強くなっているように聞こえた。
未羽から借りた折傘を広げる
うん、やっぱり高そうだった。
未羽が普段身につけているものは
高そうなやつか、オシャレなやつか
なんでそれを買ったの?って思うくらい
よく分からないのがおおい。
そう考えたら、秋くんもそうだ。
2人とも、個性的で面白い。
私には、無いものをたくさん持っている。
流されるように生きてきた
自分なんてよく分からないままに。
でも、心のどこかでは
そんな私を変えてくれる
何かに出会いたいと
思っている。
平凡な世界から
私を引っ張り出してくれるような
そんな何かに。