『お前は、これから

俺の言うことだけ聞け。』



『……は?』



俺の……言うことだけ……聞け……?


え、何がどうしてこうなるんですか?



頭の機能が停止している気がする。




そんな私にこの人は


またネクタイを、引っ張った。




やばいって、


このままだとキスしてしまいそうなくらい


近い。




それなのに、なんで


この人から目を離せないのだろう。




『あ、な、なんで

あなたの言うこと聞かないとダメなんですか』



『バラされてもいいの?』



『え、何を?』




するとこの人は


私の耳元で



『玲音の事、好きって

バラされてもいいの?』






この人……!



性格悪っ




バラされたくない



でも、
この人の言いなりにもなりたくないっ!!




『ほーら、早く。

もう少しで玲音たち来るけど』




そう言ってこの人はニヤリと笑う。


ダメだ、


この人力強くて


ビクともしないし、



この格好を玲音先輩に見られたくない……!





『早く』


『……する』


『なんて?』


『言うこと聞く事にするっ!!』




もう、仕方ない


バラされたくないもん


気持ち悪いって思われたくないもん





『よし、決まりな。』




ようやくこの人は


私のネクタイから手を放した。




やっと、解放された。



身体的には解放されても


これからは精神的に辛いんだろうな。


もうちょっと考えればよかったかな。








そうして、お互いに


名前と連絡先を交換して


この人は満足したように


生徒会室に戻っていった。





『はぁ……』




新しい友達というLINEの枠に刻まれた




城之内彼方



という名前を見る。




これからどうなるんだろ……。




ため息をつきながら


黄昏るように


廊下の窓を見ると


あの日と同じような


雨雲が空を覆っていた。