「なったらいいな、という希望的観測です。……咲桜ちゃんに、必要でしょう? そういう人」


「……しかし、現状同じ学校の教師と生徒だぞ?」


「流夜くんなら上手くかわすと思いますよ。……咲桜ちゃんの卒業を待ってもよかったんですけど、あまり咲桜ちゃんが、華取先輩に対して申し訳ない気持ちを持ってるの、先輩もいやでしょう? 流夜くんは、いつ落ちるかわからないし。もしかしたら落ちることなく一生をこちら側で過ごすことも出来ます。でも、明日落ちるかもしれない。……わからないですからね。少々急がせてもらいました。申し訳ないですが」


「……流夜くんの鎖に、咲桜が適うと?」


「ええ。咲桜ちゃんは、少し誰かに護られる気持ちを知ってほしいと思いまして。親からもらう愛情ではなくて、たった一人にしか向けられない愛情。咲桜ちゃんの母親代わりの一人として、ね。偽モノでも婚約なんてすれば、世話焼きな咲桜ちゃんは流夜くんを気にかけるでしょう? 流夜くん、家事一切出来ないし。そうやって少しでも――家族や友達以外に大事なもの、持ってほしかったんですよ。例え恋愛感情に気づかなくても」
 

あそこまで仲良くなるのは、ほんとーに計算外でした。


苦笑気味に言いながら、愛子は頬杖をついてにこにこしている。