_______ 6年前。俺は恋をしていた。

今思えば、ずいぶんとませていたと思う。小5にして、本気の恋をするだなんて。



「陽斗、見て!すっごいイイ景色!!
陽斗はやく〜」
綾花が俺を呼ぶ。
俺は必死でかけあがる。
無邪気で、元気な綾花の背中を追う。
土と石のゴロゴロした、周りが木ばかりの道をぬける。
すると、目の前には俺達が住む街全体。
「ここ、いいね!
私たちの秘密の場所にしよう。」
最高の笑顔を浮かべた綾花は、生い茂る草の上に寝転ぶ。
その横に俺も寝転ぶ。
すると、跡を追って歩いてきた和也も綾花を俺と挟むようにして仰向けになる。
街のはずれにある山の中腹は、風が吹き込んできて、少し汗ばんだ俺たちの服をぬけていく。
青色のきれいな空に、白い雲がフワフワと浮いている。
「んーきもちいいねぇ。
また来ようね、陽斗、和也!」


信じていた。
ずっと、3人でいられると。
綾花とずっと一緒にいられると。

疑いもしなかった、小5の初夏。