光一はさっさと帰らなかった自分を恨んだ。


どうせ面倒臭くなることぐらい分かっていたのに、態々声を掛けてしまった。


「いいじゃん! 幼馴染みからのお願いぐらい訊いてよ~!」


「やだ、訊かない。もう帰るから」


早口で言い終えて今度こそ扉を開けようとするが、胡美は頑固だ。とても頑固だ。


腰に巻き付いてきた細い腕、こんなことをする相手は見なくても分かる。


「ねぇ、じゃないと練習こっそり抜けてきた意味無い~~!! 折角だから美味しいの食べたい~!」


ほら面倒臭い。