校長室には滅多に生徒が出入りすることは出来ないし、それに見たことがない子だったからだ。


光一が暫く見ていると、視線に気付いたのか彼女と目が合った。


そしてスグに逸らされてしまう。それが少しだけショックだった。


光一は自転車に跨っては学校近くのコンビニに寄る。


中に入り、冷凍庫の中に入っているアイスたちを眺めてはどれにしようかと悩んでいた。


どのアイスも美味しそうで、全て買いたくなる勢いだが、結局はチョコのアイスにした。


「あ、光一じゃん」


「げッ、ゴリラ」


「ゴリラじゃなくて胡美(くるみ)っていう名前なんだけど?」


光一の幼馴染みである胡美は財布を片手にコンビニにやって来た。


「アンタ、もう部活終わったんだね」


「嗚呼、まぁな。お前の所は?」


「まだ部活。今日暑いからアイスでも買おうかと思ってきてみれば光一がいるとかマジで最悪」


いや、こっちのセリフなんだけど。


胡美はまるでゴミを見るような目付きで光一に冷凍庫前から避ける様に手で指図した。


渋々どければ、満足気な表情でアイスを選び始めた。


そんな胡美のことは放っておいて、光一はさっさと会計をしようとレジへと移動した。


「ありがとうございましたー」


定員のやる気の無い声を訊き流してコンビニから出ようとすると、胡美はまだ冷凍庫の前に立って選んでいた。


胡美は優柔不断で、レストランで食事に行ってもすぐに食べたいものが決まらず、あれもいいこれもいいと長々と考えてしまうタイプなのだ。


光一はどちらかと言えばすぐに決めることが出来る。胡美とは真逆なのだ。


「お前まだ悩んでるのかよ」


「つい悩んじゃう。どのアイスも私を買ってーって言ってきてるような気がしてさ⋯⋯」


一体こいつは何を言っているのだ。


光一は横目で見ていたが、もう帰ろうと扉を開けようとすると胡美から「待って」と呼び止められた。


「一緒に選んで!」


「⋯⋯はぁ?」