部室の扉を開ければ、既に他の部員達は来ており着替えを行っていた。


「ちわッス」


「「ちわーッス」」


いかにもバスケ部の挨拶だなと毎回思ってしまう。


光一は自分の苗字が書かれてあるロッカーを開けて着替えを始めた。


「よっ、古川。今日もイケメンだな!」


「⋯⋯そりゃどーも」


隣で着替えている雅(マサ)に声を掛けられた。一応、光一の友人である。


「なぁなぁ、彼女とは上手くいってんの?」


「⋯⋯あー、別れた」


「やっぱり? もう少しで付き合ってから一週間になろうとしていたのにな」


光一はもうそんなに付き合っていたのかと思いながらバスケ用のシューズに履き替える。


白い紐を丁寧に結ぶ。左右同じ長さになる様にキッチリと。

どちらかが長さが違うと、違和感を感じるため、練習の時や試合の時は絶対に同じ長さになる様に結ぶのだ。


もはや、これがルーティンの様でもあった。


「お前、いい加減さちゃんと好きになった子と付き合えよ」


雅が呆れ顔で先程の話の続きをしてきた。


「どうやったら好きになれるのか分かんないんだよ」


光一は足首を動かしてみて、キツくないかを確かめる。


「でもさ、だからって好きでもない奴と付き合うこと無いじゃん?」


確かにその通りなのだ。好きでないなら付き合わなければいい。