「ねえ、何でそんな顔をしているの?」
メスのシマウマが聞く。
新入りの彼女はそわそわしている。
「……悲しいんだ。」
「え?」
「僕の名前は、ゼブラ。」
「ええ…・・・。」
少し困ったようにメスのシマウマは俯く。
近くにあった壁にそっと近付いた。
「ゼブラ。あたしの名前はないよ。」
「付けてもらえるよ、嫌でも。」
「嫌でも?」
「そう、嫌でも。」
首を垂れると大きな溜め息。
溜め息といえるのだろうか
まあ、シマウマの世界なのだから。
「5日もいれば嫌いになるよ。」
「どうして?」
「捕まったんだろ?」
「ええ。でもママも一緒よ。」
「ママ?」
「そう。」
悲しい目を向けてまたゼブラはこう言った。
「じゃあもっと嫌になるよ。」