気づけば、公園のベンチに座っていた。
頭痛は治っていて、一安心。
蝉がうるさく鳴いている。遊具では、小さい子達がワイワイ遊んでいた。
隣には、炭酸を飲んでる君がいる。
そして、ふと思い出す。
あ、お礼言わなきゃ....
それと、名前....
スカートのポケットにいつも入ってる、
小さな手帳とボールペン。
いつも会話する時は、これを使ってる。
えっーと、
あ、り、が、と、う。
な、ま、え、な、ん、だ、っ、た、っ、け、?
っと...
書いた紙を綺麗に破って、
トントン、と君の肩をたたく。

「ん?」

振り向いた君に、1枚の紙を渡す。
その手は、少し震えていた。

「ありがとう...名前なんだったっけ...?あぁ、礼はいらない。礼を言うぐらい、大したことしてないし。
んで、名前... 愁、 春川 愁。(ハルカワ シュウ)」

春川 愁... えーっと...確か、
一緒のクラスだったよね....

「お前、薫だよな、一緒のクラスの。
声、出ないんだろ?」

うん、そうだよ っと...
また、君に紙を見せる。

「それで、みんなに避けられてるんだろ。可哀想だな、お前。
そんなんで避けるとか、みんなどうにかしてるよな。」


「うん、本当にそう思う。
みんな酷い。
でも、愁は優しくしてくれるから、信頼出来るよ。」






え。
あれ。
え??
なんで、なんで
声、出た。
うそ。
思ってたこと、言っちゃった...
どうしよう...

「.....え、お前声出てんじゃん。」

なんで、なんで、なんで
なんで愁にだけ?
おかしい...

「私もよく分からない...
愁にだけなら、話せる...
どうしてだろう。」

初めて自分の声を聞いた気がした。
今なら思ってること、すべて言える。
頭痛もないし、普通に話せてる。
嬉しい。
すると、微かに聞こえた愁の声。

「いいじゃん、俺だけで。」



え、

「愁、今...」
もう1回言って、と頼もうとすると、
「ごめん、やっぱ何も無い。」

...なんて言ったんだろ。






愁。
私は、愁のこと




好きだよ___________