「…失礼しまーす」

ノックをしても返事がないので声をかけながら扉を開ける


「…っ…」

生まれて初めての感覚だった。



そこで初めて見た彼は

開け放たれた窓から入ってくる風に前髪をなびかせながら
散っていく桜の花びらをただ黙ってじっと眺めていた。




普段なら何も気にせずもう一度声をかけるだろう。

ただその時は何も出来なかった。


目が離せなかった。




あなたは、何を考えているの?
誰を想っているの?