「ああ、お茶会が終わってからで構わないよ」

「いえ。女性同士、積もる話もあるでしょうし。美味しい紅茶もいただけましたので、これで失礼致します」


私と女王陛下を一瞥して、エリオット王子は背中を向け、国王陛下の方へと歩みを進めた。

国王陛下と、エリオット王子。
二人が隣合ってこちらに振り向いた時、まるで絵本を見ているかのような弾んだ気持ちになった。

(王族の方って、歳を取らないのかしら……)

息子であるエリオット王子がとっくに成人しているということは、国王陛下もそこそこのお歳のはずだ。

それなのに、エリオット王子と並んでも霞むことのない美貌。

二人が完全にこちに背を向けて扉に向かうのを眺めながら、私は自分の頬にぺたぺたと触れた。

あの人の隣に立つのに、相応しい女性であれているだろうか――いや、何故私がこんなことを考えなくてはならないのか。私は妹の身代わりで、成り代わりで、本当の婚約者ではないのに。

一瞬芽生えた、恋する乙女のような感情に私は一人眉をひそめた。


「若いわねぇ」


私の後ろで、女王陛下がくすりと笑ったような気がした。