「最近は……あまり、お話をしていないですね。仕事が忙しいみたいで」


精一杯、自然な笑顔で当たり障りのない返答をしたつもりだが、それが逆に怪しまれたりしないだろうか。

内心気が気ではなかったが、国王陛下が「そうか」と穏やかに微笑んだので、どうにか誤魔化せたのだろう。


「そんなことよりねえ、私とお喋りしましょう」


沈黙が下りる前に、タイミングを見計らったように、それまで微笑みながら各々の話を聞いていた女王陛下が口を開いた。


「あなた、お茶はいかが?」


チェアに腰掛けたまま、穏やかな微笑みで女王陛下は自分の夫に問いかけた。

それに対して、夫である国王陛下は残念そうに肩をすくめて、首を横に振った。


「いや。僕はまだ公務が残っている。エリオット、少し手伝って欲しいことがあるんだ」

「……私にできることであれば、喜んで」


少しの間を空けたあと、エリオット王子は優雅な動作で胸に手を当てて、軽く頭を下げた。