「こ、国王陛下……」


別の公務で不在だと聞かされていた国王陛下――エリオット王子の、実の父親。

切れ長の瞳につり上がった眉。
氷を思わせるアイスブルーの瞳が鋭く光って、私を捉えた。エリオット王子によく似た、陶器の人形のように整った顔が、凍り付くような冷たい表情のままでこちらに近付いてくる。

視界の端で、エリオット王子が敬礼をしているのが見えて、私も慌てて片足を一歩引き、ドレスの端をつまんで挨拶をしてみせた。


「ああ、気を楽にしてくれ。そんなつもりで来たわけではないんだ」


私達が堅苦しい挨拶を向ける中、耐えきれないとでも言うように国王陛下は小さく吹き出して笑った。

冷徹そうに見える国王陛下の突然の表情の変化に、心の準備が出来ていなかった私は真顔と微笑みの中間の、何とも言い難い表情のまま固まってしまった。