「ロゼッタさんはお菓子を作るのは好き?」

「いえ……実は、作ったことがないんです。作ってみたいとは思っているのですが……」


過保護だった育ての親は、私が刃物や火を扱うのをひどく嫌がった。

私がもしも一人で生きていく日が来たらどうするつもりなのだろうかと思いながら、大人しく料理のレシピを眺めるだけだったから、実際に作ったことはない。

サンドウィッチ作りを手伝ったくらいか。切り分けられた具を挟んだだけ、だけど。


「まあ!それは勿体ない!」


幼少期の記憶に思いを馳せながら答えた私の言葉に、女王陛下は何故か目を見開いて嬉しそうに声を弾ませた。


「それなら、このあと私と一緒に作らないかしら?タルト•タタンのレシピも教えるわ」

「でも……」

「このあと予定でも?」


こてん、と可愛らしく首を傾げる女王陛下に尻込みをして言い淀んでいると、ガコンと扉が開け放たれる音がした。

そちらを見て、私は思わず口を引き攣らせる。