「この間、遠方からいらしたお客様からいただいたお紅茶がとっても美味しくてね。ぜひ我が国でも販売してくださらないかとお話に行こうと思っていたのだけれど……」

「は、はい」

「海を渡った小さな島国なんだけど、今日は海の調子が良くないみたいで出航出来なかったのよ。暇になったから、来ちゃった」


可愛らしくそう言いながら、女王陛下は蒸らし終えたティーパックを丁寧な仕草で取り去り、ティーカップを手に取った。

どうやら彼女がお気に召した紅茶を私達に振る舞いに来たらしい。

何か大事なことがあるのかと身構えていた数刻前の自分に教えてあげたい。

私の隣のソファーに腰掛けて、じっと女王陛下を見つめるエリオット王子を、私はちらりと横目で見た。

彼も私と同じように重要な事があるのかと思っていたらしく、安堵したような拍子抜けしたような、複雑そうな表情をしていた。