「ええ、ありがとう……そうじゃなくて、あの、私ちょっと頭痛が……」
「そうか。薬を飲むといい」
「あ、なんだか目眩も……」


わざとらしく頭を押さえて眩む動作を見せてやれば、エリオット王子は眉根を寄せて私を冷たく見下ろした。

彼に仮病は通じないようだ。


「終わったらゆっくり休むといい」


それだけ言って、ヴァローナに目線を送ったエリオット王子は彼を従えて退室するため踵を返した。

私はここまてま彼のペースに乗せられると少し面白くなくて、ほんの軽口のつもりで言葉を吐いた。


「あなたは着替えを手伝ってくれないのかしら?」


淑女のとんでもない発言に、若い女性従者は驚きと色めいた声を上げる一方、ミセス・リフェルはただの夫婦喧嘩だと解釈し、布を広げながら微笑んでいる。

私の言葉にほんの少しだけ遅れて反応して、エリオット王子は立ち止まった。

それからすぐに顔だけをこちらに向けて、口角を上げた。


「脱がすのは得意なんだがな」


本気か冗談か分からないその言葉に、今度こそ若い女性従者達が黄色い悲鳴を上げた。

扉が閉まる音を聞きながら、私はまたやられたと、苛立たしげに首元のリボンを取り去ってソファーに放り投げたのだった。